鵜の眼・鷹の眼ご意見番

鵜の眼、鷹の眼の視点で、世の中の不可思議を切り取っていくブログです

自転車保険加入義務化条例

 偶々自分の息子が京都に在住していて、京都で題記の条例がこの四月から施行されることになったことを知って吃驚している。何とも雑なおそまつな条例かと思う。

 自転車に関する行政というのは日頃から随分杜撰に行われてきたと思っていたが、ここまで杜撰な法令化を行うかと聞くと黙っていられない。

 勿論、私も昨今の自転車による事故の悲惨な例は知っている。しかしだからと言って、まず打つ手が自転車保険の加入義務化というのは無いだろう。とにかく被害者に金が支払われる方策さえあればいいだろうという将に泥縄式発想だ。ちなみに泥縄式という言葉は死語に近いので知らない人の為に付け加えれば、「泥棒を捕まえてから、その泥棒を縛るのに必要な縄を綯うという意味で、後手後手の対応でその場凌ぎというような意味に使われる」言葉だ。

 まず自転車は人を殺傷するまでに至りうる危険な乗り物であるという事に対する処置。確かに自転車で衝突したことで死に至らしめる事例も起きている。だとしたら、まずこういうことが起きないようにどうするかが求められているのであって、起きること前提で保険さえあればいいという事ではない。

 自転車は人を殺傷しやすい乗り物か?答えは難しくなくNO(ノー)である。そんな事は誰だって知っている。それでも何故、人を殺傷してしまうことがあるのか。一つは乗る人間のマナーの問題。もう一つは自転車を運行するルールがあまりにいい加減、曖昧であるということだ。

 自転車に乗りながらスマホを使い、歩道を走る。しかも右側通行でとか。そういう事を放っておいて、自転車に乗りたければ1億円以上払える保険への加入を義務化する?馬鹿じゃないの・・・。

 あまり言いたくはないが、裏に官僚(この場合は地方自治体のだが)と保険会社の裏の癒着があるように見えてならない。そもそも自転車保険という曖昧な言い方だ。何の保険に入ることが義務化されているのか、一目瞭然でない。

 こいつら(敢えてそういう言い方をさせて貰うが)の言い分は「ホームページには詳細に記載されています」「詳しくはネットで」などと言い逃れをするつもりなのだろうが、実際の現場では保険会社の営業のやりたい放題になるだろう。よく判らないまま、本当に必要かどうか判らない契約をさせられてしまうケースが多発するだろう。

 私の感覚からすれば、自転車保険というものがあるとすれば、まず一義的には盗難の際の補償保険の事である。いまやママチャリと称するものは1万円を切った価格で流通している。こんな低額な商品に保険を掛ける人間は居ない。所謂ロードバイクと呼ばれている比較的高額商品がある。どんなに安くても(バッタもんを除けばだが)10万円以下で買えることはなく、大抵の場合15万円以上はする。100万円を超える商品もざらだ。こんな商品には保険会社の方が保険を設定しない。ロードバイク用には保険は存在しないと言っていい。

 つまり自転車保険などといういい加減な言い方ではなくて、はっきりと自転車傷害保険と少なくとも言わなければならない。

 そして一律というのは絶対駄目だ。抑止効果にならない。人の迷惑もわきまえない乱暴な奴が起こした傷害の落とし前を、普段は善良にしか乗っていないその他多数のユーザの負担にしようとしているのだ。極悪非道の自転車ユーザに対する厳罰化なくして利用者全体への傷害保険の加入義務化は、本末転倒と言う他ない。