あるじなしとて・・・
久々に散歩の風景。ここはいつものコースの途中にある場所だが、梅が綺麗に咲き誇っていたので撮影してみることにした。しかし、この家の主は不在だ。不在というより行方不明というほうが近いのかもしれない。何があったのかは判らないのだが、家の主はある日突然居なくなったようだ。
家は昭和末期から平成初期頃のもので、結構モダンな造りになっている。しかし雨戸は閉じられ、屋根は苔むし、玄関前の白かった筈のスクーターの風防の錆による色の変化が時間の推移を物語っている。今すぐにも出掛けられるように玄関前の置かれたスクーター、今すぐにでも使おうとしたのか庭木の前に立てられた脚立。散らかした痕も片づけた跡もない。普通に生活していて、ある日突然居なくなったという感じだ。
この立地、この家屋の造りからすると、5千万円は超えるだろう。借金だけ残っての夜逃げだろうか。債権者は居るのだろうか。いろいろ考えてしまう。
しかし、主が居なくなっても、丹精込められていた梅の樹は季節がくれば花を付ける。それが何故か余計に不憫だ。
東風吹かば、匂いおこせよ梅の花。あるじなしとて春なわすれそ。
あるいは、
夏草や、つわものどもが夢の跡
といったところだろうか。